こんにちは、コラージュニスト沙織です。
ブログ内で徒然エッセイを日々更新しております!
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「ありがとうの輪」
大切なひとに「ありがとう」という想いがあふれた時、どんな手段でそれを表現するだろうか? 表現方法は人それぞれだが、自分が持っている最大限の力で感謝を表現したいと思った時、私の場合は絵を描いてプレゼントすることにしている。 物心がつく前から褒め上手な大人のおかげで「絵を贈るとみんなが喜んでくれて私も嬉しい」という図式が脳内で出来上がっていた。気がつけば絵を描くことが最も自然で、最も想いを込められる表現方法になっていった。 小学校の卒業式、別の街へ引っ越してしまう親友に方眼ノートに描いた手製の漫画を手渡した。 鉛筆描きの拙い白黒漫画だけれど、6年間の「ありがとう」をなんとか形に残して渡そうと、彼女を主人公にした短編物語を描いたのだ。 登場人物は全て同級生。仲良く遊んだメンバーとの楽しかった記憶をいつでも思い出してほしい、という願いを込めた一冊だった。「ありがとう、大切にするね!」と受け取ってくれた彼女は、音楽が得意で将来はピアニストか歌手になりたいと言っていた。しばらく離れてしまうけれど、3年後には同じ高校の音楽科と美術科に入学してまた再会しよう!と約束をした。 それから彼女と会うことはなかったものの、ずっと約束のことが頭から離れなかった。 高校の合格発表の日、人だかりの中で彼女の笑顔を見つけたときは本当に嬉しかった。手を取り合い、お互いの合格を喜んだ。「あの漫画と約束が受験の励みになった、ありがとう」と言ってくれたときは、思わず涙があふれた。 さらにその10年後、彼女はオペラ歌手として私の結婚式で素晴らしい歌声を響かせてくれた。あの時の感動は一生忘れられない。私にとって絵を描くことは、関わってくれる人たちへの「ありがとう」を表現することであり、新たな思い出や経験をつないでいく輪のようなものだと思う。 そう、「ありがとう」の力は連鎖していくのだ。
■このエッセイは2018年に河北新報「まちかどエッセー」に掲載されたものです
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