こんにちは、コラージュニスト沙織です。
ブログ内で徒然エッセイをできるだけ毎日更新しております!
インスタと併せてどうぞお楽しみください♡
「ひらめきの波」
かの有名なピカソは言った。 「ひらめきは自分で呼び込めるものではない。私にできることは、ひらめきを形にすることだけだ。」 絵を描いているとよく分かるのだが、意図的にひらめきを得ようと構えれば構えるほど何も湧いてこない。 むしろ、ゆっくり食事をしたり湯船でまったりしている時に突然ハッとするようなアイデアやイメージが湧いてくる。 それもほぼ完璧な青写真で脳裏に焼き付き、あとは持ちうる表現技術を使って色鮮やかに再現していくような感覚で描いている。 展覧会でよく聞かれる質問の一つに「作品を一枚仕上げるのにどれくらい時間がかかりますか?」というものがある。 これはなかなか難しい質問で、一体どこからどこまでが製作時間なのか私自身もはっきりとわからない。 創作活動というのは青写真を具現化する行為だけを指すのではなく、ひらめきが訪れるまでの待ち時間をも含むと思っている。 それはつまり、日常生活における喜びや悲しみ、希望や絶望などさまざまな心の葛藤を経験する時間のことである。そしてそこからの学びとして得たものが、まるで抜き打ちテストのように〝ひらめきの波〟となって訪れるのだ。 そう、ひらめきとは不意に打ち寄せる深青の大波に似ている。到底コントロールの及ばない自然の産物だ。 そして私たちは未知なる大波を乗りこなそうと奮闘しているサーファーのようでもある。 日々、挑戦と失敗を繰り返しながら心身と技術と勘を鍛え、やがて来る大波に備えている。 だからこそ大波をクリアした時の喜びはひとしおであり、その生き様と勇姿に人は感動を覚えるのだ。 私にとってのサーフボードは「色と絵筆」だ。 ひらめきの大波をキャッチし、色鮮やかに筆を走らせるため、いま必要な学びをこの人生で経験しているのだろう。 ひらめきは呼び込むことはできない。だが必ず最善のタイミングでやって来る。 ピカソはこうも言っている。 「全ては奇跡だ」と。
■このエッセイは2018年に河北新報「まちかどエッセー」に掲載されたものです
Recommend
- 「香りの記憶」
- 「虹色の通学路」
- 「本当の好きとは?」
- 〈色のお話〉黒色が教えてくれるメッセージ
- 〈色のお話〉赤色が教えてくれるメッセージ
- 〈色のお話〉紫色が教えてくれる繊細さんへのメッセージ
- 〈アルバム〉作品を飾っていただいている風景