こんにちは、コラージュニスト沙織です。
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「運命の人」
絵を描いて展覧会を開催していると、その会場で「運命の人」に出逢うことがある。 私が百貨店の展覧会場で在廊していた時のことだ。黒髪で凛とした瞳の若い女性が、ある一枚の絵の前で立ち止まり、じーっとこそこから動かなくなった。 後ろ姿にそっと声をかけると、彼女は瞳を輝かせながら振り返った。 数日後に遠くの街へ移ることや、新生活にお供する絵が欲しいとぼんやり考えていたら、たまたま通りがかった展覧会場で私の絵を見つけて目を奪われたことなどを教えてくれた。 希望に満ちた瞳と七色の羽を持つ鳥の作品に、これから始まる新しい人生のビジョンがピタッと重なったのだそうだ。 美しき女性のこれからの未来に自分の絵が関わることができるだなんて、これほど嬉しいものはない。 と同時に、この作品は間違いなく彼女のために描いたのだと確信した。 私は絵を発表する時に、その作品がどんな人の元に嫁ぐのかといつも楽しみにしている。というのは、絵筆を持つことでお役に立てる人がいるからこそ、神様からの司令で私は絵を描いていると思うからだ。 作品が「運命の人」と出逢う瞬間に立ち合うことは、画家にとってこの上ない喜びなのだ。 多くの人は「縁を結びたい」と願っている。しかし縁とは自分で結んでいるようで、実はもう結ばれているものではないだろうか。 だから神様の前で手を合わせる時は、願い事をするのではなく感謝を伝えることにしている。 「いつも結んでくれてありがとう」と手を合わせ、今すでに繋がっているご縁に感謝をするのだ。 それは願うというよりも「祈る」という感覚に近い。 そして祈るということは〝委ねる感覚〟にも似ている。 全てのことが必然ならば、私たちは「運命の人」にはもう出逢っているし、これからも必ず出逢うことになっている。 だから探さなくても大丈夫なのだ。 安心して、目の前の道を歩いて行こう。
■このエッセイは2018年に河北新報「まちかどエッセー」に掲載されたものです
-追記-
ちなみにこのお話には後日談があって、黒髪の美しい女性と数年ぶりに全く別の都市で再会した。 それもまた、彼女が迎える新しい人生の転換期に。 そしてまた、私にとっても人生の大いなる転換期であった。 「運命の人」は、お互いに「自分の道を歩く」と決めた時に何度でも巡り逢うものなのだ。
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