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コラージュアートとは(後編)

コラージュアートとは(後編)

こんにちは、コラージュ作家の沙織です。

前編では「コラージュとは」という一般的な美術概念と、コラージュ制作を始めたきっかけについてご紹介しました。後編では制作過程をご紹介いたします。 〈前編はこちら〉

「素材からつくる」

通常のコラージュや貼り絵は、既存の素材(雑誌、新聞、布など)を切り貼りすることで描いていく技法ですが、沙織のコラージュは素材から作ります。
初期の頃は雑誌や壁紙などの色柄合わせが面白くて積極的に使用していましたが、雑誌はどうしても耐光性に弱く、長期的な保存や美術作品としてのクオリティ面で満足がいかなくなり、あるときから和紙をアクリル顔料で染めて使用するようになりました。

作家の出身地が岐阜県ということもあり、伝統工芸品である美濃和紙を主に使用しています。最近は土佐和紙の厚手の風合いも好きで、花のコラージュによく使用しています。
和紙というのは素材そのものにパワーがあります。寒い冬に冷たい水の中で、職人の手によって一枚一枚愛情を込めて生み出されているためか、その表面に触れるとふわっと温かいのです。素材が生きている感じがして心が和みます。
そんな有難い自然由来の和紙に「色」という息吹を吹き込んで、コラージュのパーツにしています。

▶︎【関連コラム】画材・素材について

沙織のコラージュは「色を織る」

色鮮やかに染めた和紙を一枚ずつハサミで丁寧に切り取り、下絵に沿って何層にも貼り重ねます。
その際に大切にしていることが、仕上がりのイメージを決めすぎない、ということ。

あくまでもその時の感性に従って「色を感じながら」「直感を信じながら」「きれいだなぁ〜、面白いなぁ〜と感じる組み合わせで」「自由に貼り重ねる」ということ。

コラージュの醍醐味は、全く違う素材や色を組み合わせるなかで、意外性や偶然の産物を楽しむところにあります。
一番下に置いた色の上に全く違う色が重なることで、チラッとだけ見える色が良いアクセントになったりします。時には、色と色の間に差し込むように別の色を重ねてみたり、またある時には、貼ったものをエイッと剥がして別の部分と融合させてみたり…。

色を塗るのではなく「織る」「編む」という感覚に近いです。絵の具を筆で塗るより大胆に、遊び心を持って、未知なる仕上がりを楽しみながら制作するため、

「Enjoy」「Fun!」「Beautiful♡」という創り手の新鮮なエネルギーが作品に宿ります。
作品というのは、創り手のエネルギーが観る人にも伝わるものです。どうせなら、観るたび「Happy」になれるアートがいいと思いませんか?

「手仕事の温もり」を感じるアート

コラージュ作品は一枚を仕上げるのにとても時間がかかります。すべて手仕事で一点ずつ丁寧に作るからです。手間がかかるからこそ温かみを感じる、とよくお客様に仰っていただきます。

デジタル社会がどれだけ進化しても、質の良いリアルにはかなわない。
アナログで一から作り上げる手仕事のあたたかみや、肉眼で見ることで初めてわかる複雑さ、モノとしての存在感をリアルに体感することは、現代だからこそ必要な〝五感に対するご自愛〟だと感じています。

また、コラージュは和紙の他に金箔などの煌く素材を使用しているため、時間帯によって見える色に変化があります。その日の気分によっても見えてくる色が変わる不思議な存在です。
一枚の絵を目の前にした時、どんなことを日々感じるのか。心と身体で対話する癒しの時間として、アートをお楽しみいただけたら幸いです。

〈前編はこちら〉

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